夫と離婚した場合、私と子供は夫から遺産を相続できるのでしょうか?

先日、夫と離婚しました。元夫との間には、2人の子供がいます。彼も私も老境に差し掛かっていますが、もし今後元夫がなくなった場合、私と子供たちはかれの遺産を相続することができるのでしょうか?


離婚した配偶者から、遺産を相続することはできないため、質問者が遺産を受け取ることはできません。ただし、お子さんは違います。

すでに離婚している配偶者が「離婚した、元配偶者に遺産を相続させる」と遺言を残していない限り、元配偶者である質問者が遺産を相続することはできません。
ただし、実子であるお子さんは、相続をすることが可能です。

たとえば離婚した配偶者が、質問者と離婚してから新たに得た家族にのみ相続させたい、と遺言を残したとしても、お子さんには「遺留分」を請求する権利があります。


遺留分とはなにか

遺留分とは、民法1028条に規定された、法定相続人に認められる最低限の相続できる遺産のことです。
遺産相続にあたっては、被相続人の意思が尊重されるべきで、民法902条にも、被相続人が相続分を定める権利を認めています。
しかし、子や妻にまったく相続をしないという遺言が残されたとき、その後の子や妻の生活に著しい不利益が生じる可能性があります。
そのような事態を防ぐため、民法は遺留分を規定しているのです。


参考:e-Gov法令検索 -民法1028条民法902条

遺留分を受け取るにはどうしたらいいのか

民法で規定されている遺留分について、その存在を無視した遺言を残すことは可能です。
遺留分を受け取る側がなにも言わず、遺言の執行を待つと、遺言の内容のまま遺産相続が行われます。
遺留分を受け取るには、その権利を主張し、「遺留分減殺請求」を行わなければなりません。
また、遺留分減殺請求を行う権利には、消滅時効があります。
遺留分を受け取ることのできる権利者が、相続の開始や、贈与、遺贈を知ってから1年です。
相続等があったことを全く知らなかった場合でも、10年で時効を迎えます。


相続人として欠格、排除される場合もある

実子であるお子さんは、基本的に相続を求めることができる旨をここまで説明してきましたが、その相続の資格を失うこともあります。

遺留分を受け取れない、相続欠格者となるのは、次のような場合です。


  • 被相続人、または相続において自身より相続順が上、同順位である人物を殺した、あるいは殺そうとしたことで刑罰を受けた
  • 被相続人が殺害されたことを知っていて、告発、告訴しなかった
  • 被相続人が相続に関する遺言を撤回、取り消し、変更しようとしたときに、強迫や詐欺で妨げた
  • 被相続人に強迫や詐欺を行い、相続に関する遺言や、その撤回、取り消し、変更などを強要した
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造、破棄したり、隠した

ここまでは、被相続人が何もしなくとも民法891条で相続人欠格となる事項です。

引用:e-Gov法令検索 -民法第891条


次に、相続人として廃除される事項を以下に示します。


  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他著しい非行


これらの事由に相続人(今回であればお子さん)が当てはまる場合、被相続人はその相続人から相続権を取り上げるよう、家庭裁判所に申し出ることができます。

ただし、廃除の理由があることを、相続人は証明する必要があります。
遺産相続人として欠格となる、あるいは廃除される理由ですが、かなりの重い内容となっています。
逆に言えば、よほどのことがない限り、お子さんは相続の権利を失うことはないでしょう。


遺産相続カテゴリーの質問