失踪した夫の財産は、相続できるのでしょうか?

夫が数年前に失踪し、なんとか子どもたちと共に生活してきましたが、物入りになり困っています。夫名義の不動産を処分できたら、と思っていますが、名義を私に移すことはできるでしょうか。


条件が揃っていれば、「失踪宣告」という手続きを行うことで相続が可能になります。失踪宣告の手続きと、その種類を解説します。

失踪した夫が、財産を残している。
このような場合、その財産を家族や親族などが相続することは可能なのでしょうか?

失踪状態の夫は、生死不明の状態になりますので、 夫の財産は、宙に浮いたような状態です。
財産管理や生活などの観点から、夫の財産を整理したいと家族や親族が思うこともあるのではないでしょうか。

結論から言うと、「しかるべき手続きをすれば、失踪者の財産の相続は可能」です。
相続のために必要な手続きは、「失踪宣告」になります。


失踪宣告とはどのような手続きなのか

・失踪して生死が判然としない。
・もう亡くなっている可能性がかなり高い。
・帰ってくる見込みが低い。
このような場合であっても、失踪者の生死を確認することは、容易ではありません。
失踪者の生死すら分からないまま、失踪者の家族や財産は不安定な状況に置かれることになります。

例えばその失踪者が一家の大黒柱で、家族の生活が失踪者の預金によって支えられていたとします。
失踪者が居ない状態では、生活費の捻出も容易ではありません。
しかし、本人が失踪しているので、預金の他に不動産などにおいても手続きが難しい…生活ができない…。ということがあるかもしれません。
そのようなときは失踪宣告を行うことで、失踪者の財産を家族の誰かが相続し、財産の整理が可能になります。

失踪宣告は、裁判所でのみ行うことのできる手続きです。
裁判所に失踪宣告を申し立て、失踪者の生死にかかわらず「法的に死んだもの」として扱う制度になります。
失効宣告によって失踪者は「死んだもの」として扱われるため、相続が可能になるのです。

なお、失踪宣告はあくまで「死んだもの」として財産関係などを整理するための制度になります。
失踪宣告が下された後に本人の生存が分かった場合は、本人や利害関係人が失踪宣告の取り消しを求めることも可能です。


失踪宣告には「普通失踪」と「危難失踪(特別失踪)」がある

失踪宣告には2つの種類があります。「普通失踪」と「危難失踪(特別失踪)」です。


普通失踪

普通失踪とは「普通に生活していて突然失踪してしまった」などのときに使われる失踪宣告です。
普通失踪は生死不明になって7年経過したときに死亡とみなされます。


危難失踪

危難失踪とは「戦争や船の沈没、災害(震災など)の危難にあった」ときに使われる失踪宣告になります。
危難が去ったあと、1年間生死不明の場合はこの危難失踪の対象です。
危難失踪が認められると、危難が去ったときに死亡したものとみなされます。
普通失踪より短期なのは、失踪の原因が危難(災害など)だからです。


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