未婚で妊娠後、中絶しました。相手男性に慰謝料を請求できますか?

付き合っている男性との間に、子供ができました。しかし、育てていくことができないから、と相手から中絶を強く求められ、断りきれずに結局中絶してしまいました。それから身体の調子も思わしくなく、ひどく落ち込んだ状態が続いています。相手に慰謝料を請求することはできますか?


基本的に慰謝料請求は難しいと言わざるを得ません。しかし、相談者が中絶に至った経緯により、慰謝料請求が可能な場合もあります。

子供は女性のお腹に宿ります。
そのため、中絶により身体的に負担を負うのは、主に女性側です。
性交渉により、未婚で妊娠した。
子供を産んでも育てることが難しいため、中絶を選択した。
このようなケースでは、女性から男性に慰謝料を請求することができるのでしょうか。

「基本的に慰謝料請求は難しい」が結論です。
性交渉は両性の合意によって行われるため、妊娠という結果も両性の合意のもとであると判断されます。
中絶も両性の合意のもとに行われることが基本だと解釈されるため、女性側が男性へと慰謝料請求することは難しいと考えられるのです。
ただし、絶対に慰謝料請求が認められないわけではありません。
ケースによって認められる可能性があります。

妊娠や中絶についての慰謝料請求の考え方

慰謝料とは、精神的な苦痛に対しての慰謝で支払われる金銭のことです。
どのようなケースでも支払いが認められるわけではなく、以下の3つの要件が必要になります。

  1. 権利を侵害した行為(相手の行為が権利を侵害したこと)
  2. 損害が発生したこと
  3. 権利の侵害行為と損害に因果関係があること

慰謝料請求のためには、1~3の一連の流れが認められることが必要なのです。
権利侵害の行為をしていない相手に慰謝料請求、つまり慰謝を求めるのはナンセンスではないでしょうか。
権利侵害と損害、そこに因果関係が認められるからこそ慰謝料請求も認められると言えます。

妊娠やそれに至る性行為、中絶はどうなのでしょう。

性行為は両性の合意のもとで行われたと考えるのが基本だという話をしました。
それが転じて、妊娠も基本的に合意しての行為の結果ということになります。
中絶についても、双方の同意の上で行われるわけですから、精神や肉体に苦痛が生じても権利侵害行為はないと解釈されるのです。
そのため、男性側に慰謝料の支払いを請求することは「できない」のが基本になります。

中絶について慰謝料の支払いを求められるケース

ここまで、中絶に至るまでの行為が合意である前提で、「慰謝料請求ができない」と解説をしてきました。
しかし、裏返せば、きちんとした合意が取られていない場合、その限りではないということ。
中には慰謝料の請求が認められるケースもあります。
以下のようなケースです。

  1. 強姦
  2. 中絶の強要
  3. 避妊していると嘘をついての性交渉
  4. 結婚前提だったのに実際は配偶者がいて「中絶してくれ」と求められた

主に性行為や中絶などが合意にもとづいていないと判断されるケースや嘘をつかれていたケースです。
この他には、「出産するか中絶するかの話し合いを男性側が避け、中絶費用も払わなかったケース」で、女性側の慰謝料請求が認められた実例があります。
慰謝料請求の具体的な可否や疑問については、男女問題を得意とする弁護士に相談することをおすすめします。


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