離婚調停中に妻が行方不明になりました。この場合、離婚はできるのでしょうか?

妻は私からの離婚の申し出に反発していて、調停をすることもかなり渋っていました。このまま妻の行方が分からなければ、ずっと離婚できないままになってしまうのでしょうか?

離婚調停中に配偶者の一方が行方不明になった場合、調停を続けることができなくなります。しかし、それで離婚が不可能になるわけではありません。公示送達という手続きによって、相手方が不在でも離婚裁判を行うことができます。

離婚調停中に妻の所在がわからなくなり、調停にも出席しなくなった場合は、調停は不成立に終わるため、そのまますんなりと離婚することはできません。


この場合、離婚を成立させるためには、離婚訴訟を申し立て、裁判に移行する必要があります。具体的な手続きについて検討してみましょう。


公示送達を申し立てる

本来、訴訟を提起する際には、相手に訴状を送らなければなりません。今回のように相手方が行方不明の場合は、民事訴訟法第110条により「公示送達」という方法が取られることになります。


東京簡易裁判所によると、公示送達とは、「意思表示を相手方に到達させたいが 、「相手方の住所が分からない」ために、「意思表示を到達させることができない場合に,その意思表示を到達させるため」の手続きです。
この場合、妻が所在不明になる直前の住所地を管轄する裁判所に申し立てを行ないます。


ただし、相手方の所在が判明しているけれども、相手方が郵便物を受け取らないというだけではこの方法を取ることはできませんので、公示送達を申し立てる側が、相手の所在を探す努力をしたということを証明する必要があるのです。


調査報告書が必要

以上のことから、公示送達の申請には、「調査報告書」を添付することが不可欠となります。
調査報告書の形式は様々ですが、裁判所によっては書式や記入例を用意しているケースもあるようです。
調査報告書の内容は、非常に詳細なものを求められます。


山口簡易裁判所の調査報告書を例に挙げると、調査した日時や調査場所といった基本項目だけでなく、①表札の有無、②郵便受けの状況、③電気・ガスのメーターの稼働状況、④大家や管理人などからの実地での聞き取り・面接内容など、具体的かつ説得力のある調査が必要とされているのです。


公示送達の許可が出れば裁判が行なわれる

裁判所に申し立てが認められ公示送達の許可が出れば、裁判所の掲示板等に掲示が行なわれます。


民事訴訟法第112条第1項により、この日から2週間が経過すれば公示送達の効力が発生しますので、それ以後、離婚裁判が進められることになるでしょう。


相手方が掲示に気づかず、欠席のままで裁判が行なわれても、こちら側の言い分が通り裁判で離婚が認められれば、妻が不在のままでも離婚を成立させることができます。
戸籍法第77条第1項及び第63条の規定に則り、裁判が確定した日から10日以内に市町村役場で離婚届を提出しましょう。


このように、離婚調停中に妻が行方不明になった場合でも、公示送達の手続きを行ない、離婚を成立させることは可能です。


ただし、前述のとおり、「本当に行方不明だ」と裁判所に納得させるだけの調査報告書の提出が必須となります。煩雑で面倒な手続きとなりますので、このあたりの分野に明るい専門家の助けを借りられることが早期解決に繋がるといえるでしょう。


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